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- 2023.07.03 Monday
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沖縄、宮古島の吉野海岸で、
怪しく黒いおじさんに会った。
吉野海岸は、宮古島の東に位置し、
その北の新城(あらぐすく)海岸と並んで、
宮古島の2大シュノーケリングポイント。
新城に比べ、パラソル貸し出しに精を出されたり、
駐車場代をとられたり、商業的な面が強く、
個人的には新城のほうがお気に入りだが、
ビーチにはゴミ一つなく、海の青さもまぶしく、
「美しい」と思わせる要素が多い。
おじさんは、白いシャツに、白いパンツ、白いハットで近寄ってくると、おもむろに「この海の注意事項」を話し始めた。
宮古島のビーチでは、このような、「環境と、観光客を守る人々」が、よく話しかけてくる。たいてい、海水パンツに上半身は裸で、よく日に焼けた、たくましいタイプの男性たち。
このおじさんだけ、どこか雰囲気が違う。
手をもぞもぞ動かしながら、注意事項を話している。
話が丁度終わったところで、
これはプレゼント、と首にかけてくれたのは、
真っ白い珊瑚の首飾り。
最後に、「吉野のおじさん」と、名乗り、
「じゃあ、楽しんでね」と去っていった。
「かわいい」
友だちと、今もらった珊瑚を見比べて笑い合う。
夕刻。
涼しい風が吹き始める中を、
車でのんびり島巡りしながら、小さな雑貨屋を見つけては、
入って楽しんでいると、雑貨屋のお姉さんが声をかけてきた。
「あ、吉野のおじさんに会ったんですね」
これ、と、私たちの胸元の珊瑚を指差す。
「知ってるんですか?」
「知ってるも何も、この島ではかなり有名ですよ。
本島の人だけど、この島のことを真剣に守ろうとしてくれていて、
島の人にもかなり人気ですから」
珊瑚の白が、白い服を身にまとったおじさんの、
白い心までもを映している気がした。
夜、バーでその話をすると、
沖縄歴の長いネイチャーのおじさんが、色々と話してくれた。
「吉野海岸は、吉野のおじさんのおかげで復活したんだって。
観光地にできないほどほうっておかれていた海岸を、
ゴミを一つひとつとって、自分でできないときは、
『珊瑚の首飾りを作ってあげるから、拾ってきて。
その横にゴミが落ちてたら、それもついでに拾ってきて』
って、人をうまく使って、海岸をきれにしてくれたらしいんだよ。
ゴミ、なかったでしょう?」
うん、うん、とうなずく。
「ほんといい人だよ。ただでモノをくれたの、吉野のおじさんぐらいでしょう? 吉野海岸もすっかり商業的になってしまって」
吉野のおじさん、怪しいなんて思ってごめんなさい。
旅行中、肌身離さず身に着けた珊瑚の首飾り。
最終日の夜、つい誘われて踊りにいってしまい、
そこで見事に落として帰ってきてしまった。
なんだか、宮古島にいるのに、快楽を求めたことを
吉野のおじさんにがっかりされたような、そんな気がした。